殺処分ゼロに取り組むピースウィンズ・ジャパン大西さんとの対談

●なるほど。そもそも年間何十万匹もの犬や猫が殺処分されてしまう社会的なシステムというのは、どうやって出来上がったんでしょうか?

大西 元々は誰かに飼われていた動物たちも多いんですよね。そして、さっきSaoriさんがおっしゃっていたように、ちゃんとした犬の扱い方を知らずに飼ってしまったがゆえに、噛む犬になってしまったとか、アレルギーがあるのにもかかわらず猫を飼ってしまい、発症してしまった後に手放してしまうとか。理由は様々だと思うのですが、その動物たちのことをきちんと理解せずに迎え入れて、失敗して、いらないって手放してしまう。そして、その手放し方も様々で、動物愛護センターに持っていく人もいれば、直接山に捨ててしまう人もいる。捨ててしまうと今度はその子たちが野良になって、野良同士が繁殖を繰り返し、どんどん増えてしまう。そして増えていく子たちが可哀想だからという理由で、今度は人間が餌をあげてしまう。そうすると健康状態が良くなって、また繁殖を繰り返す。そういう悪循環が今あると思うんですね。あと行政の施設は誰かが迷惑するからという理由で回収しなければいけない。感染症が広がるからという問題もあります。でもいっぱい溜まってくると、どうしようもなくなって処分をするしかない。受け皿がきちんとしていないのに、どんどん犬や猫たちが入ってしまうという現状も良くない。愛護センターという名前が付いているので、そこに持っていけば次の飼い主さんを見つけてくれると思っている人が多いと思うのですが、それは本当にごく一部で、ほとんどが処分されています
Fukase 名前が随分皮肉ですよね。「愛」でも「護」でもないっていう
大西 昔の「保健所」のほうがまだよかったかもしれない。そもそもは、人が動物と関わったときに、その人がきちんと責任を持つ。一度飼ったのであれば、最後まできちんと飼う。そして何らかの理由で飼えなくなったのであれば、他の人にお願いするか、あるいは受け皿をきちんと探す。そういう当たり前の責任を取らなきゃいけないと思うんですね
Fukase 今の話を聞いて思ったんですけど、本当にいろんな人がいますよね。お腹を空かせた犬を見たら、餌を与えるのが正しいと思う人もいれば、その結果が招いてしまうことを考える人もいる。昔議論になった「ハゲワシと少女」の写真と同じですよね。ガリガリにやせ細った少女とそれを後ろから狙うハゲワシの写真を撮ったカメラマンが、「どうしてそこで少女を助けなかったんだ?」っていう非難を浴びて。彼は「ひとりの少女を救うことよりも、この写真を撮ることで世界に惨状を訴えるのが自分の役割だ」って主張し続けたんですけど、最後は自殺してしまうんですよね。だから、目の前の誰かを助けたいと思う人とその先を見越して行動する人、両者はどうしても対立しますよね。そして何かを無くして行こうっていうメッセージって、なかなか伝わらないですよね。だから僕は今回のプロジェクトでファンにメッセージを伝えたいというよりは、具体的な仕組みが作りたい。だって、何かに悩んでいる友達にいろいろアドバイスをしても、変わってくれた試しがないから(笑)。

●プロジェクトを進めていく上で、大西さんが直面している壁とはどういうものですか?

大西 確かにあれだけの規模のシェルターを抱えて運営していくためには大きなお金や人手が必要です。しかし、それはなんとか紡ぎ出していけばいいと、団体設立20年を迎えた経験から、私たちは先が見えているんですね。逆に困難にぶつかっているとすれば、次の世代のことなんですね。実際に子どもたちが犬を飼いたいと思ったとしても、ご両親が「ダメダメ!」という家庭もあるだろうし、子どもたちに犬を飼うための知識があるのかもわからない。しかし、ヨーロッパに行くと、幼稚園から犬の勉強をしているんです。これを日本でしてしまうとすぐに親御さんが飛んでこられるかもしれませんが、子どもたちに犬の格好をさせるんですね。鼻をつけて、耳をつけて、首輪をつけて、リードをつけて、君は犬の役ねって。そして、その場で繋がれてしまう。そうして人の役の子どもたちが、その周りをバタバタ走り回ったり、ワーワーキャーキャー騒いだり、耳や尻尾を引っ張ったり、普段犬にしてしまうことと同じことをやるわけです。そして、最後に犬役の子に「どうだった?」って訊くと「怖かった」と答える。こういうことから勉強するんですね。ただ、この教育の部分をテコ入れしていくのは本当に大変です。私が直接会った子どもたちに、犬との接し方を教えることはいくらでも出来ますが、日本全国に動物の教育を広げていくことは凄く大変です。これだけ身近な存在なのに、教科書に犬や猫のことってほとんど載っていないですよね。なんで今、人間と一緒に暮らしているのかという歴史のことも知って欲しい。そこが根底にあって、いろんなことを学んでこなかった私たちが大人になり、犬や猫のことを持て余しているっていうことがあるんじゃないかと思います
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